清水音羽川(後編) 2008/04/30

昭和57年度 国土地理院 航空写真 整理番号 CKK-82-2 地図番号NI53-14-3 撮影コ−スC7 写真番号18の一部を切り取り画像処理を施した。

このレポートは正直公開しようかどうか相当に迷ったレポートである。
はっきりというと、真似は絶対にしないで欲しい。
危険であるからだ。

これを読んで自分でもできそうだといって、実行されても、当方は一切責任を持てない。
また、そういった行為を推奨するものでもない。
あくまで、レポートとして結果を記していくだけである。
また、今回のレポ−トは動きがわかりやすいように写真横に時刻を入れてみた。
見易いか見難いか、皆さんに意見を求めたいと思う。
掲示板に書き込んでくだされば幸いだ。

では、始めよう。場所は前回検索を諦めた五条バイパス下、清水音羽川である。
前回はまだ装備が整っておらず、川の中を歩いて上がると言うことは出来なかった。
 が、今回は長靴と共に、この河川の上流を目指す。
前回の検索で五条通の南、正面通りの北側で、地元の方が語っておられた清水音羽川の合流点、そして、道路に転用されて残り続ける清水音羽川を見てきた。
今回は距離にして前回の2/3程度、であるが延々と山の中を登り続けるという未知の検索となる。
音羽の滝から下ってくればよいのだろうが、それを行わなかったのは下るよりも、こういった場合は登っていく方が絶対的に楽だから、と言う判断である。
私はよく木に登る。
検索時にでもそうであるが、出来るだけ河川の全貌を捉えるためには高所よりの俯瞰撮影が必要だと考えているからだ。
木に登る時、一番難しいのは、降りる事なのである。
少なくとも登る事より格段に難しい。
登るときは高いところへと登るのだから、緊張して気を抜くことはない。
だが、高いところへと登り切った後は、どうしても油断が出る。
降りるときは登るときよりも倍以上気を遣わなくてはならない。
特に、後1mと言うところでは特に気を付けなくてはならない。
 更に、個人的には谷が深く、全く未知の場所であることも降りると言うことを躊躇させた。
登っていくのであれば、谷をまく時であっても降りるよりかは動きやすいだろう。
そう言った考えもあり、今回は前回の終点から登っていくことにした。
結果的に、これが正解であった。
8:40:52
さて、今、前回の五条バイパス下、清水音羽川にいる。
これ以上は残念ながら長靴でもない限り、立ち入れないと前回諦めた場所である。
だが、今回は長靴を持ち込んだため、先へと進める。正直、8時を廻っていたので、少々人目に付くのではないかと心配したが、そんなことはなかった。
8:44:24
左は大谷墓地のお墓である。
正直、時期と時刻を選んだのにはこういう理由がある。
四月の終わり、五月の初めであれば、寒さもそんなに無いであろうと言う考え、そして、なによりも虫の活動する時刻を避けたいが故に、朝を選んだ。
夏になれば、うんざりするほどの藪蚊の襲来にさらされるだろう。
今の時期であれば、まだ虫もそんなにいない。
それに、夏になれば藪も深くなるであろう。
こんな傾斜のある土地で藪の斜面を歩かなければならないと言うのは勘弁して欲しい。
 さらに人目に付くのも問題である。
お墓参りをしている方々の横を山の沢沿いにごそごそ動き回る・・・。
どう考えたって、いい雰囲気ではない。
 ここからが正念場である。
8:42:22
これから先は、長靴を装着しなければ、先には進めない。
河床は藻が成長しているが、幸い量も少なくまた、ぬるぬるしているものでもなかったため、快適なグリップと感触で、歩いていける。
しかし・・・・これは何年の間、人が入っていないのだろう、この谷筋には。
刈り払われた形跡もなく、ただただ、両岸の植物ものびるに任せているような状態。
また、河床もかつてはコンクリートが施工されていたようだが、それも割れて今では堆積した土砂がそれらを覆い隠している。
 水は・・・なんだか全然冷たくなく、想像していた以上に暖かい。
そんなに汚れていない様だが、お魚さんの類は全く姿がないが、これがこの河川で見た最初で最後の水棲動物の姿。
ザリガニであるが、何の種類なのかは分からなかった。
しかし、水棲動物がいない、水が冷たくない・・・。
これは・・・・・おそらくこの先にあるであろうものを予想させる。
8:45:30
両岸には、堆積した土砂の上に植物が育っており、新緑の季節にふさわしい緑の葉を精一杯広げている。
なんか、田舎の田圃脇を歩いている感覚である。
しかし、直ぐに、右側の山斜面が藪と化した。
これはもう、何年も刈払われていない姿である。
時期を間違えると絶対に進入できないな・・・これ。
8:46:28
こういった土管も川に突き出している。
川は、狭い谷を縫うようにして流れている。
水深はだいたい10cm前後。
左岸の堆積地を使えば、スニ−カ−でも来られるであろうが、絶対にやめておいた方が賢明であろう。
8:46:04
時々このような小さな堰堤になっており、谷幅一杯ではないが、右は藪、左は築堤。
回避不能と言う場合もあるからだ。
しかし・・・生き物の姿が全然ない。
本当にいない。さっきから蛙やザリガニの類、既に発生している蚊などは見た。
が、水中に何もいない・・・。
8: 49:22
三枚の写真を合成した。
徐々に深い谷へと成長し、両岸が壁となり、迫ってくる。
当然、私が逃げられるスペ−スも減ってくる。
一体どれほどの年月をかけて、川は谷を削ったのか。
所々に護岸の石組みが見られたのだが、それらでさえももう用を為さないほど崩れている。
だんだん、荒れた様子になってきたのだが・・・大丈夫か、これ・・・。
8:51:22
うぉっ!。これは・・・ふかいじょ・・・・靴下浸水は確実である。
仕方なく対岸に上がって深みを巻こうとしたが・・・
8:51:46
これはある意味・・・藪の次に嫌な状況。
成長した笹による牢獄である。
進もうにも、常に笹や、それに付随しているツタが体に絡んできて、なかなか進めない。
これは何年も刈り払われていないとこういう状況になってしまう。
うーん嫌だ・・・・。
早く浅瀬で、再入川したい。
暫く藪の中を進むとおりられる所を見つけて再入川。
9:00:12
まだ、こちらの方が早く進める。
藪の中を進み続けないと進めいない場所は・・・・先にはないことを祈る。
左右に堆積地があるがその面積も少しずつ減ってきた。
そして、くの字型に屈曲する部分にさしかかったとき、何気なく河床を見ると・・・
9:01:06
これはぁぁぁぁ・・・・・。
だって・・・・これ、墓石でしょ!?。
どう足掻いたって足で踏んでいかないと先に進めない・・・・。
山側も墓地側も、切り立っており、逃げ場がないっ!!
9:01:16
更によく辺りの河床を見ると、堆積物に覆われているが、正方形の石、長方体の石、丸い円錐状の石・・・・。
ぎゃぁぁぁぁぁぁ・・・・
これ、全部お墓関係の石・・・・!?。
嫌ぁぁぁぁぁぁぁぁ・・・・・
9:01:40
仕方なく 行った!!
結構水深があったが、石の上だと回避可能だったからだ。
けど・・・何なの?この良心を責め立てる後ろめたさは・・・。
南無阿弥陀仏、南無阿弥陀仏・・・・・・・。
ごめんなさいー。どうか化けて出てこないで・・・・。
そして、曲がった瞬間・・・。
”え”っ・・・・”
9:04:52
さ、砂防ダムぅ〜・・・・・・。
やはりあったか・・・。
お魚さんの類が全くいなかったのも、水が温かいのも、おそらくこいつのせいである。
地元に住む女性の話では・・・
”かつて墓地の横に上へと上がっていく道があり、それを行くと小さな池があった。
そこで息子がザリガニを捕るからといって付いていったことがある。
かれこれ30年以上も前の話だけど・・・”
30年前までは、道があり上へと登って行けたようだ。
だが、現状では道などは全くなく、河床を歩くか、藪の中を谷筋に歩くしかない。
さて、砂防ダムであるが・・・もちろん私も手も足も出ない。
濡れてるし、水は上から落ちてくるし、取り付く場所もない。
この砂防ダムはいつ頃出来たものであろう?。
少なくとも30程年前までは池があったという事は砂防ダムなど無かったという事であろう。
この30年間で造られたことには間違いない。
しかもこれ・・・・どうやら何期かに分けて造られた可能性もある。
9:06:52
何故かって?。
継ぎ目があるんだよ。コンクリ−ト同士の間に。
しかも、綻んできて水が噴き出してるし・・・。
いきなりコンクリートの擁壁が割れて鉄砲水なんて・・・・起こりませんよね・・・・?。
なんかの映画みたいに・・。
大丈夫ですよね・・・・。
9:07:18
運良く、砂防ダムの手前の山側に砂防ダムを巻くようにして、山側へと続く踏み跡のようなものを発見。
しかも、上の方はやたらと空間が開いており、日の光が射し込んでいる・・・。
何で・・・?。
9:07:40
少し上がるだけで尾根に出た。
地形の傾斜はかなり急峻で、両手を塞ぐ一眼レフでは撮影しにくかった。
これからの課題である。
そして広く開いている空間・・・・突如として現れた伐採地。
これは、最近伐採されたようだすな・・・。 9:08:32
かなりの面積が伐採されている・・・そこに置かれているビニ−ルを被せた物体、なになに・・・。
9:09:26
であるそうだ。
何もこんな所を選んで伐採して調査研究するというのも・・・。
このビニ−ルを被せた倒木の脇に砂防ダムの擁壁上に出られる場所があるが・・・こあい。
だって、まかり間違って、踏み抜いたりしたらダム湖に直行!!。
「ぼくドザエモンです〜」の完成まで直行・・・
今回はそれだけは避けたかった。
あなたには想像できますか?。
ずぶ濡れになった人間がこんな昼間に近い時間帯に、五条バイパスの下から”ぬぅ”と現れて、自転車で走り去らなくてはならないのを。
下手をすれば通報ものである。
その為に慎重に慎重を期して、擁壁上に出た。
9:10:58
で、砂防ダムの擁壁上に立ってみる・・・。
これ、絶対に迂回しなきゃ無理でしょ。そこには満々と水をたたえたダム湖が広がっていた・・・。
 まだ水も青々としていれば、風景的にも絵になったのに、水は濁っているは、油膜みたいなものが浮いているわで、あんまり絵にならない。
これは結構な水量だぞ。
高さは5m以上、幅は広いところで10m近く。
そして奥行き的には50mぐらいはあった。
もっともダム湖自体が曲がっており、先が見通せ無いので、もっと奥まで続いている可能性もある。
 唐突に現れたダムによって清水音羽川を辿るのは困難になった。
さて・・・これは山側を伝いダム湖をまく(迂回する)しかない。
しかし、これが結構な手間となった。
先ず現在の位置だが、丁度道程の1/3程の場所である。
予期していなかった砂防ダムの築堤から山側に逃れ、ダム湖をまくとなると、谷を一つ越えて、急勾配の斜面を下らなければならなかった。
9:15:42
先ず、谷に降りていく道はすぐに分かった。そこそこの規模で伐採された伐採地の奥に谷へと落ち込んでいく踏み跡を見つけた。
大分と五条バイパスよりの場所となり、もう少し行けば、今度は五条バイパスよりの尾根に出る、そんな場所で、その踏み跡らしきものはあった。
谷も山も規模は小さいのだけど、急勾配の連続で、歩きにくいことこの上ない。
しかも、今回はGR DIGITALが不調のためS2proのみを持ってきたのが裏目に出た。
両手を使わないと撮影できないため、この急勾配では両手を塞いでしまえば即、滑落である。
このため、急勾配の斜面では、身の安全が確保できる場所でしか撮影していない。
9:17:40
途中までそれらしい跡だったが、獣道だったのだろうか?。
きれいサッパリ、急斜面に変貌した踏み跡。
仕方なく、慎重にこれを谷底に向かい下る。
9:19:54
昔はこの谷筋にも水が流れていたのだろうか。
川の跡らしきものが先に見えるダム湖迄続いていた。
だが、長い間、水は流れていないようである、この落ち葉の体積具合からして。
人間が歩いた跡も全くないので、何の遺構もない。
見た限りは。
 だが、まだこの谷で、漸くダム湖の半分ぐらいの位置になるのだろうか。
谷の先にダム湖が見えるがまだまだ幅もあり深そうだ。
9:22:36
じゃあ・・・・この谷の向こうがわに登り、さらに、上流をめざす。
そんなに高さはないけどほぼ、垂直に近い斜面。
しかし、まだ、柔らかい土質なのが救われた。
全く取り付く隙間もない岩壁であれば私も諦めただろうが、これなら容易に登れる。
9:23:48
登ると・・・今度は再び尾根になり急激に清水音羽川の方へと下っていく斜面になる。
しかし、この辺りは人が来ているようだ。
このような木に巻く印が付いているから。
人為的ではないとしたら、恐ろしく低い確率の自然現象で、木にこのように巻き付いたのだろう。
9:25:10
斜面で、徐々に高度を下げて行くが、またしても、伐採地が現れる。
いったい何なのだろうか、この伐採後は、おそらく先年の秋頃に行われたのではないだろうか。
森を形成していた木々が倒された後に、まだ今年に生え始めたような雑草の類や、低木が芽を出していたのが特に印象に残った。
この伐採地の下辺りが、おそらくダム湖の始まり、先端辺りだと思う。
9:30:21
そして、ふと見ると、もう、ダム湖は終わって、変わって、小川のようになって流れる清水音羽川の姿があった。
かなりの急斜面であったが、ここも先程の谷と同じく土質が柔らかいので、慎重に降りれば怖くはなかった。
これがダム湖に流れ込む前の清水音羽川。何かこう、田舎の田圃の横を流れる川みたいな感じではある。
雰囲気はいい。が、その雰囲気にも浸っていられない。
何しろ時刻が時刻なのだ、そろそろお墓参りに来られる方もおられよう。
川沿いのお墓に参っているときに、河原からがさがさと音を立てて動く人影。
・・・何度も書くが、やはりどう考えたっていい雰囲気ではない。
しかし、ダム湖の始まりも見ておきたい。よって、人目に付くのも承知で、降下地点より、清水音羽川を下る。
9:30:56
30mも行かないうちにダム湖の始まりが見えた。
ここが先程の砂防ダム湖の始まりとなる。あれから考えると・・・少なくとも、水深は深いところで7−8mぐらいはあるのではないか?。
しかもどう見たって、水は濁っている。これは長靴を装備とか言う話ではない。ダイビングの道具が必要であろうが、そんな道具を揃えたって、絶対に潜りたく ない場所である。
9:31:26
さて、清水音羽川であるが、いきなり規模を縮小したような流れになる。
河床にも、少し変化が現れ始めた。
何と言えばいいのか、黒色の泥が堆積し始めている感じなのだ。
何となく嫌な予感はしたが、まあ、偶然だろうとこの辺りでは思っていた。
また、水も少し泡っぽくなり始めるのもこの辺り。
9:31:52
急激に川幅が狭くなったと思ったら、再び蛇行を始めたり、変化に富んだ清水音羽川を見ることが出来るが、ここに来て、再び川幅が狭くなり、両岸が迫ってき た。
全く逃げられない河川である。
こっちもとことん(ダム湖はさすがに逃げたが)ガチンコ勝負してやろうじゃないか。
ここら面も両岸の堆積物の上を歩いたが、何と言えばいいのだろうか、土質が変わったように感じられた。
堅い土の上を歩いているのではなく、何と言えば、若干湿った土の上を歩いているような感覚と言えばいいのだろうか。
長靴の靴底から、グニグニとしたみょ−な感触が印象に残っている。
 また雑草の勢いも比較的強く、夏に来たら確実な藪となっているだろう。
9:32:36
こういったコンクリ−ト管が墓地側より突き出している。
おそらく雨水用だろうが、この清水音羽川、雨の時は姿が一変するのかも知れない。
墓地側からも、水の流入はあるだろうし、何より、山側の谷状の地形から、水がかなり流れ込んでくるのではないだろうか。
五条バイパスの堰堤を越えた辺りにも五条バイパス側から突き出していたコンクリ−ト管があった。
あれはそのまま五条バイパスからのものであろうか?。謎である。
9:33:18
蛇行部を過ぎると、先程のダム湖の下流のような河川に戻る。
この辺りの護岸はそこそこ古いのだろう。いい感じで苔むしている。
それに、こんなブロックは近年余り見かけないかなり横に長いブロックである。
この辺りは、おそらく下流側の砂防ダムより古い時期に護岸が造られていたと見るべきなのかも知れない
しかし気になりだしたのは、水面の泡が増えだしているのだ。
こんな感じで。
しかも、茶色い沈着物も、目に見えて増えてきている。
そして、少し蛇行して、先が見通せる場所に出た瞬間。
9:35:00
はぁ?・・・砂防ダムぅ〜・・・!?。
おいおいおい・・・聞いてないぞ。
というか、いくつ砂防ダムがあるのよ、この河川。
ここ、京都駅から車だと15分かからない場所だよ。
この位置からだと、歩いたら10分以内に清水寺に着いてしまう場所だよ。
なのに何なのよ?、この川は?。
ダム湖はあるわ、遠巻きにして越えていかないと行けないわ、急斜面の山だわ・・・。
・・・・え?、じゃあそんなことを言いつつ、歩いているお前は何なんだ・・・・って?。
無言のまま進行。
9:35:18
またしても現れた砂防ダム。これは・・・再びダム湖の出現を感じてしまった(涙)。
となると・・・再び山側の斜面を登り遠巻きにしてダム湖の終了まで進むしかない。

少し戻ってみると、藪の中に、なんとか山の斜面に取り付けそうな場所を見つけ、そこから登り始めた。
そして、私は何を思ったのか、s2proを右肩にかけて、斜面を登っていったのだ。
そして、それは起こった。
滑落
である。
状況を説明すると、大分登った辺りで、漸く平行に移動できそうな場所があった。
手は両方使って、重心を支えていた。
その時に、私は何を考えたのか、ふと右肩から谷側を振り返ってしまったのだ。
無論、重力に従って、s2proがするりとストラップごと肩から抜けて・・・
がさっがさがさがさっ・・・・・”
あ”あ”あ”ぁぁぁ−−−−−−−−−−とまれぇぇぇぇ−−−っ”
と声を挙げたところで、止まるわけもなく約5mほど下の斜面で漸く止まった。

そして、私も、次に何を考えたのか、左手を離しちゃったのだ。
重心を支えていた手を。
”・・・・あ”−−−−−−−−っ!!!!!
ホントに叫んじゃったよ。
多分、あの時間帯、お墓に参られていた方は、山側から”あ”−−−−−−−っ!!!”という絶叫が聞こえて、続いてがさがさがさっと、ものが落ちていく音 を聞かれたのではないか。多分聞かれたのであれば、落ちていったものが私です。
落ち出した瞬間は時間がスロ−モ−ションになった・・・本当に。
よく事故で、当たった瞬間、時間がスロ−モ−ションになった、とか言う方がいらっしゃったが、あれは多分本当だと思う。
そして、”う−わ・・・やばい・・・・けど多分、死なないな”と思った自分がいた。
”がさっがささささささ・・・・・”
途中で止まっていたカメラの脇を通って、それも巻き込んで滑落した。
 そして、砂防ダムの横にある護岸上にある平場で、漸く止まった。
多分この間5秒にも満たない時間だったと思うが、上記の出来事が一瞬で起こったのだ。
しばらくぼ−っと、上の木々の葉を見ていた。
う−ん・・・・目は見える。耳鼻口も・・・大丈夫。頭とかは・・・大丈夫っぽい。もとから悪いのはどうしょうもないけど。
・・・顔もだろう・・・って?。
うるさ〜い(笑)
身体も動く、手足も痛くない。
どこも出血していない。
落ち葉がたんまりと堆積した斜面を滑落したのが良かった。
クッション材の替わりになってくれたのだろうか。
よし。
上半身を起こして見ると、そばにカメラが落ち葉まみれで転がっていた。
手に取る。
レンズは・・・・無傷だ。
よくあれだけの高度から落ちて傷が付かなかったな。だってSIGMA 12-24mm f4.5-5.6だよ、この時に付けていたの。
出目金のように前玉が飛び出している奴。
とりあえずレンズは無傷であり大丈夫そうだ。
カメラはどうか?。
外見を見る・・・大丈夫そうだ。
土と落ち葉にまみれているが、見た限りひび割れも出来ていない。
電源は入ったままだから、上部の液晶にシャッタ−を半押しにすると、絞りとシャッタ−スピ−ドの表示が出た。
電源系統も生きている。
ファインダ−を覗いてシャッタ−を切る。
ガシャッ、という音と共にシャッタ−も切れた。
・・・・セ−フ。
さすがにほっとした。
これがなければ、これから先携帯電話のカメラで記録しなければならなかった。
しかし、それはさすがに嫌だった。
だって山の中から”ピロリロリ〜ン” とか音をさせて撮っている自分が。
9:39:50
滑落後の最初の一枚。
状況を確認すると、滑落によって砂防ダムを巻こうとしたが結果的に砂防ダム脇の護岸上に出てきてしまったと言うことだ。
しかし、ふと砂防ダムの水の落ち口に目をやると・・・。
あれ・・・・、もしかしてこの砂防ダム・・・。
目の前には砂防ダムの擁壁がある。段差は1mほど。
ゆっくりと呼吸を整えつつ、それに登ってみた。
9:42:44
・・・・・
既に役割を終えていた砂防ダムだった。
おそらく下流域よりもこの砂防ダムが早い時期に完成したのだろう。
が、既にその役目を終えていた。
砂を防いでいたが、その砂によってダムは埋め付くされた。
砂防ダムとしては、末期の姿。
そして、二度とその土砂が取り除かれることはないだろう。
 そして、明らかに、清水音羽川が変化し始めたのも、この砂防ダムからだ。
何と言えばいいのだろう、ほのかにかほる、このにほひ・・・。
この、卵が腐ったようなみょ−な、かほり・・・・。
 これ・・・下水が流れてるでしょ。
あの匂いと同じなのだ。
太田川の暗渠や、旧天神川の暗渠の匂い。
おいおいおい・・・・勘弁してよ。
何でこんな所まで来て下水なの。
答えは少なく、選択肢も限られていた。
清水寺しかない。
考えたくはないが、この川の源流部を有する清水寺の何処かの下水がこの河川に流れ込んでいるのだ。
9:43:52
河床も変化した。
ヘドロ、である。
見た目はきれいなのだが、その下にヘドロが堆積している。
この砂防ダムの手前で書いた黒色の泥というのは、おそらくこいつだ。
 さすがに砂防ダムの擁壁付近は降りると沈み込む可能性があったので、少し上流側から河床に降りた。
河床も明らかに柔らかく、足を浸けると黒いヘドロが水の中に舞い上がる。
しかし、皮肉にも砂防ダムが埋め尽くされて広い平場となって先には進みやすくなった。
一体どれほどの年月をかけて、川は砂防ダムを埋めたのか?。
 いや案外時間はかからなかったのかも知れない。
そこそこ急峻な山肌を流れる川は、山の土砂を削り押し流していく。
雨が降った後など、その量は増えるだろう。
それが堆積していけば・・・こうなる。
塵も積もれば山となる。
9:43:44
前編に述べたように、地元住民の話でこの清水音羽川は音羽の滝まで続いている。
と言う話を聞くことが出来た。
と言うことは当然、歩いて行けた時期もあるのだろう。
 当然、80年前にはダムなど存在していなかったのであろう。
その代わりに大雨になると、現在の五条バイパス辺りは清水音羽川が氾濫を起こしていた。
今でさえダム湖を巻いたときに結構な高低差があった。
河川自体が短く、上流域が急峻な山。
おそらく恐ろしいほどの光景があったのではないか、大雨の後には。
その上こうも話しておられた。
”この河川は通常の河川と違い、上流が広く、下流が狭い”と。
この清水音羽川は暴れ川だったのかも知れない。
現在では牙を抜かれたように見えるが・・・いつ暴れ出すかもしれない。
まあ、私が生きている間は下流域の砂防ダムは埋まらないだろうから、安心かな(何が?)。
遂に墓地側の護岸が無くなった。
清水音羽川を遡る検索も終盤に入ったということだ・・・けど、この終盤に来ていきなり気持ちが萎えた。
だって、だんだんと匂いが濃くなってきたんだもん。
テンション
それに、虫が飛び始めていた。
まだ、吸血する奴ではなかったので良かったが、今の時期でこれだけ飛び始めていると言うことは、夏には・・・・想像するのも嫌である。
9:44:18
少し進むと・・・おいおい支川があるよ。
いや、ごめん。
正直に書くとこの支川の存在は予期できていた。
下調べに等高線を見ていると幾筋もの谷が地形から見出せたからだ。
ただ、実際に水が流れていたのはこの谷が初めてである。
向かって正面から右が支川、左が清水音羽川になる。
水の色の違いがお分かり頂けるであろうか。
透明な支川側と灰色の清水音羽川側。
かつてはここもY字形の谷だったのだろうが、今は砂防ダムによってできた平場がその地形を僅かに留めているだけに過ぎない。
支川側を遡ってみる。
9:45:02
広い河床に僅かに水が源流方向から流れている。
しかし、この水は・・・汚くはない。
逆にきれいなのかも知れない。
この水の姿こそが清水音羽川のもとの姿なのか。
谷の奥からひんやりとした風が吹いてくる。
 マイナスイオンを含んだ風なのだろうか。
非常にすっきりとした気分にさせてくれる。
9:45:40
先細りしていく谷に支川は続いている。
が、途中でこのように細くなり、先は、倒木によって塞がれている。
ここまでだな。ここにこれ以上時間をかけると、音羽の滝から脱出するのが難しくなってくる。
もうそろそろ観光客の方々が大挙して来る時間帯なのだ(大挙して押し寄せておられました(ToT))。
9:46:22
ふと、引き返したときに右手側に古い石組みを見つけた。
そこそこ年代が立っていそうだが、いつ、誰が、何故このような場所に石組みを施したのか?。謎である。
さて、あんまり辿りたくはなくなってしまったが、支川を離れ、清水音羽川を辿る。
9:47:42
いきなりのこの足跡。
私ではないですが、誰がこんな場所に来ているのか?。
だって、これ、ヘドロの上にどかっと足を降ろした跡だからね・・・。
けど、さすがに長靴みたいだね、この足跡の主も。
もし普通の靴なんかで入ったら、辺りがぐちゃぐちゃになってるだろうし。
9:51:02
で、川幅が狭くなってくる。
つまり、ヘドロの堆積した河床を歩くしか無くなってくる。
ううぅ・・・臭いし、ぬめっとした感触が靴底から伝わってくるし・・・。
ホント長靴で来て正解だったよ。
普通の靴だったら確実にここで引き返していたよ。
しかし、一体どこから流入しているのか?。
これだけの量の水が流れていると言うことは、多分、下水道としてはそこそこのものが流入しないと、こんな水量で流れてくると言うことはあり得ない。
9:51:32
だんだん河床にも灰色の藻のようなものがなびき、小石の類のものしか見えなくなってきた。
下流域にあった藻や、草木の類は、全くない。
いわば、この辺りは死の川同然の状態になっている。
全く生き物の姿が河川の中にないもん。
いや、見えないだけで、多分ボウフラの類はいると思う。
それが気温が上がり、夏になって孵ったりしたら・・・。
ぞぉぉぉぉ・・・・・
背筋が寒くなるような場所になるね・・・今の時期に来て良かった。
9:52:00
大小の石が河川の両脇に乱雑に散乱している河川。
その殆どがヘドロにまみれている。
何が清水なのか?、清い水はどこへ行った?。
拝観料を徴収しているのなら、こういう河川を直しなさい。
京都市も京都市である。
明らかに汚水が流れているのだから改善命令を出しなさい。
これでは・・・川が泣いているぞ。
9:54:08
もう、何も言うことがない黒い水たまりである。
こんな色になるには、少なくとも5年以上は流れていなければならない。
どれだけの時間、下水が流れているのか?。
その手がかりは今のところ分からないが、現在の場所を正確に知る手がかりが、だんだんと得られてきた。右側の清水方面から人々の話し声や、忘れ物のアナウ ンスの声が聞こえだしてきたからだ。
もう、後僅かだけど・・・。最後までこんな様子だったら・・・泣くぞっ!!
世界の中心で愛を叫ぶ、ならぬ、音羽の谷の中心で臭いと叫ぶ、だ。
しかも叫ぶというより、絶叫したい、いやする。
9:55:08
いきなり立派な三面コンクリ−ト張りになる清水音羽川。
こんな谷の、いや山の中で不自然極まりない展開である。
怪しさ爆発と言ったところか。
 ただ、更に嫌なことは、河床を進む身として、もう、耐えきれないぐらいに匂いがきつく、不快であったと言うことだ。
だって、河床部からの匂いが両岸の護岸で籠もっているような状況になるのだ。
河床部はヘドロの堆積した河川よろしく、ぬめぬめのぬるぬる。慎重に歩を重ねていった。
と言うか、先程のダム湖に落ちるより嫌である。
こんな所で、ヘドロに向かって転倒などと言うことは。
そんな姿で音羽の滝の下方辺りから”ぼくドザエモン〜”なんて言いながら 現れでもしたら、確実に通報されるであろう。
9:56:04
このヘドロを分かっていただけるであろうか、まかり間違ってこんな場所で靴下浸水などと言うことが起これば・・・ヤケになって、先に進めるかも知れないが とにかく慎重さを要求されたのがこのコンクリ−ト護岸地帯である。
9:57:04
もう、何も言うことがない。
と言うのか、既に気分が悪くなってきているのだ。
匂いのきつさに。進めば進むほどに匂いがきつくなってきているではないか。
一体どこから流入しているというのだ。
この河床に堆積した土砂の間の真っ黒な水たまり・・・。
川が苦しんでいる・・・・。
ふと、そんなコトバが思いついた。
9:58:50
今回の滑落を除いて最大の難所だった場所。
コンクリ−トの護岸によって左右には回避不能。そして、一跨ぎでは越せない、水深不明のヘドロをたたえた堰堤。
思わず””いやぁぁぁぁぁぁぁ〜〜〜〜”と口に出したのは秘密である。
しかし口に何か出さないと、既にやってられない状況に私は陥っていたのだ。
既に私の頭の中は清水音羽川の始まりまでたどり着くことから、いかに早く、この両岸の逃避スペ−スへと逃げ込むか、を考えていた。
 仕方なく、目の前に出た木の枝を支えにして、何とか堰堤の先の石に足をかけて、重心を移し突破。
あの重心を移す瞬間ほど、ひやっとしたことはなかった。滑ったら、ヘドロ の海に確実に沈むだろうから。
10:00:56
それを越えると・・・連続堰堤地帯に出る。ここで私は決心した。その先に見える堰堤で護岸の上に逃げ出そうと。
余りの臭いのキツさにもう、気分が悪くなってきた。
この清水音羽川は。
ごめん、多分30m程だけど調査できなかった場所が存在することになってしまった。
10:03:22
”ふはっ、ふぅ−−−−−はぁ−−−−−−ふぅ−−−−−・・・・・”
匂いの籠もっている河床部から左岸の護岸上へと逃げ出した。
堰堤上のヘドロはもう最悪にぬめり、臭かった。
慎重に沈み込まないように場所を選び飛び越えて、護岸を登った。
・・・・あ−−−−−−−−、空気が・・・・美味しい・・・・。
すぅーはぁーーーーーすぅーーーーーーはぁーーーーーーーー
・・・こんなに空気が美味しいものだったとは。
放心状態になる私。
とにかくバックを降ろし、服の間に空気を入れて暫く休む。
匂いを取らないことには、この先の場所から出られなくなってしまうではないか。
暫くばたばたと服をはたきつつ、ふと、一体どこから下水が流入しているのかと考えたが、それはこの後直ぐに分かることとなった。
ちなみに水の流れる支川が画像中央から清水音羽川に合流している。
今となっては、どこから流れてきているのかを調べておけば良かった、と後悔している。
もう正直いきたくない(ToT)
10:04:00
直ぐに有刺鉄線を張った柵が見えて、このような高い堰堤になっていた。
お地蔵様も泣いているよ、この川の有様は。
そして、堰堤の横を通るときにふと下流方向を見たその時。
10:05:54
お前が犯人かっ!!!
河川の中に塩ビパイプが突き出し、そこからじょろじょろ、じょろじょろ・・・と明らかに色の違う水が合流していた。
今のところ私がどうこういって直るようなことではない。
だからこそこのことを広く世に知らせて、このような垂れ流しが無くなるように、先ず、清水音羽川の現状を知っていただきたい。
2008年4月現在、清水音羽川を流れる水は下水の水である。
しかも、吐水口の具合からして、ここ2−3年は放置プレイさ れているようだ。
また、これだけ小さくしか撮せなかったのは、望遠レンズを忘れてきたからだ。
これはいつものことである。
近づけば良いのだが・・・・今回ばっかりは近づきたくない(涙)。
10:06:44
もはや場所は確実に分かった。
清水の舞台の真下に到達しようかという辺り。
谷の上からは人々の話し声が聞こえてくるし、よく見れば歩いている人の姿も見える。
どうやらあれが匂いの元凶だったようで、高い堰堤を越えてしまうと匂いは消えて無くなった。
何か、すがすがしいもとの姿の清水音羽川を見るようだった。
周りはゴミ一つ落ちていない。
きれいなものであるが・・・きれいであるが故に、余計にあの下水が目立ってしまう。
10:07:06
どうやらここはかつての順路だったようだ。
ライトアップ用のサ−チライトが何基も川の半ばに設置されている。
階段を上っていくと・・・。
10:08:16
行き止まりが見えてきた。
いよいよ、源流部だ。
音羽の滝に群がっている人々の会話が、直に耳に入ってくる。
緑が濃く繁っており、それから漏れてくる木漏れ日が非常に美しい。
さすがにこの谷は死角なのだろう。
先程も述べた通り、緑も濃く誰一人気付く人はいなかった。
10:09:22
終わったな・・・。
二つの砂防ダムを越えて、滑落を経験し、ヘドロの海を進み、匂いと戦いつつどうにかこうにかここまでやってきた。
もう、先程のヘドロを洗い流すために、小川のようになり水の少なくなった清水音羽川の真ん中を進んだ。
けど、本当にここで終点。
・・・いや・・・もう少し行ける。
10:10:42
ここで本当に谷側からは終了。
音羽の滝が参拝順路を潜り、谷に流れ込んでいる場所である。
まさか今回はこんなに大がかりな検索になろうとは思っても見なかった。
長靴を必要とし、ま、廃道には入った感覚で遡ると・・・まぁ、途中で苦しめられた。
何より、あのヘドロ地獄が参った。
これでは、遡ろうとする人がいても、途中で諦めるのがおちである。
さて、ここまで来たが、ここから帰路に就くには・・・年間八百万人が訪れる観光地を通って帰るしかない。
もう一度この川を下って帰るなど、あの匂いを嗅いだ後では到底考えられないし選択肢にも入れなかった。
(えっ・・・川を下っていかないのかって・・・? やめてください、死んでしまいます orz )
まあ多分、最後はこうなるだろうと思って鞄の中には普通の靴を入れておいて正解。
服に付いた落ち葉や汚れを出来るだけ落とし、あのカホリを出来るだけ散らす。
まあ、何とかなるでしょう。
 そして長靴を鞄にしまい、普通の靴を履き込んで、参拝道に通じているであろう階段を、ダッ シュ!
10:19:38
ふぅ〜〜〜・・・、何喰わぬ顔で参拝道に合流すると直ぐに音羽の滝が目に入る。
さすがに長靴でここを歩いていようものならば、周囲から浮きまくりであったことは間違いない。
10:20:00
そしてこの滝こそが、清水音羽川の始まり、今回の終着点でもある。
一日に、何百人、何千人がこの滝を見に来るのだろう?。
そして。その先を知っている人は何人いるのだろう?。
胸の中にもやもやしたものを抱えつつ、今回の清水音羽川の検索は、終了した。

しかし、今回の検索は、終了後もとても気が重い。
清流と思っていたら実は下水が流れ込んでいたと言うオチは、笑うに笑えない。
まだ、”実はさぁ−検索中に滑り落ちちゃって大変だったよ〜”と笑えるのであればどんなに良かっただろうか。
上の写真は源流部と途中の下水合流部。
今一度清水音羽川の現状を知り、どうすればこのようなことが直るのか、どうすれば、直さなくても言いように、自然と人間が共存できるのか、いや、自然に負 荷をかけないで済むのか、を考えて欲しい。
水は巡る。こうやって人間が汚した水は、巡り巡って、再び我々の元に返ってくるだけだからだ。
清水音羽川(完)

検索河川レポート一覧に 戻る
inserted by FC2 system